打ち上げに備える

14 Dec 2011

信頼できる衛星を打ち上げるのと宇宙ごみのかたまりを打ち上げることの違いは何でしょう?最終打ち上げを模擬した数多くの振動音響試験が行われているかどうかです。


Aerospace


衛星はその役割を果たす前に手荒な移送に耐えなければなりません

1943年に世界で初めてチャージ型加速度ピックアップをリリースし、振動測定の世界に参入して以来、ブリュエル・ケアーは幅広い統合的なソリューションを提供し続けています。特に宇宙関連では40年以上の長きにわたり、複雑な試験要求に応えてきました。

衛星の振動試験には、再現性が保証された制御方法で実環境を模擬した試験環境に衛星を導入するためのさまざまなソリューションが必要となります。打ち上げ時の振動や衝撃レベルは、電磁式加振器システムと温度、気圧、機械的応力の無数の組み合わせを起こり得ない条件も含めて試験できる音響試験室を用いて再現できます。


このようなテストでは、数百チャンネルにおよぶ応答の加速度ピックアップデータを同時計測するのが一般的です。40年前、インドのNational Aerospace Laboratory(NAL)の音響試験施設では、2チャンネルのシステム、ランダム信号発生器やスペクトラム整形機などが使われていましたが、今ではデータ収集システムは、高周波サンプリングで数百チャンネルを扱えなければならないのです。さらに、膨大なデータをポスト処理で使用するための大容量のワークステーションも必要です。

このような高いサンプリング周波数で記録されたデータは、継続時間が非常に短い衝撃試験などの場合には欠かせません。サンプリング周波数はアナログ信号を1秒間に何度サンプルするかを示す数のことで、最良の結果を得るには、理想的には250 kHz超とする必要があります。それは、爆発のような事象が引き起こす衝撃では、すべてのデータが非常に短時間に生じるためです。


ブラジルのINPEでは数百の入力チャンネルを備えた最新データ収集システムが使われています。入力サンプリング周波数を250 kHz以上にすることも可能です。画像をクリックしてビデオを再生

適格性試験と認定試験

衛星の安定適格性と耐久性の認定は、建造時の正念場です。それゆえ、宇宙開発では振動試験に対して世界で最も厳しい条件が求められます。衛星の部品やサブシステム、組み立て完成品を堅牢にするための設計、開発、製造工程を通じて、このような厳しい試験体制が採用されました。


「設計適格性試験は、通常物理的に完全に模擬された構造モデルを用いて行われます。」

設計適格性試験は常に完全に複製された構造モデルを用いて行われます。これは打ち上げ時にかかる振動レベルに装置が余裕をもって耐えられる設計にするためです。そして、認定試験は衛星の実飛行モデルを用いて行います。完成度を確認し、各装置が最終形態においても仕様を十分に満たす動作をし、打ち上げ時にも性能が低下しないことを確かめることを目的とします。

そのため、衛星の適格性試験手順(Qualification Test Procedure:QTP)は、認証試験手順(Acceptance Test Procedure:ATP)とは全く異なっています。QTPはATPよりも広範囲に及び、設計を決定するために一度だけ行われます。そして当然、QTPは決して打ち上げられることのない双子の衛星に対してのみ行われます。QTPには、一般的に湿度などの環境試験、振動、衝撃試験などが含まれますが、ATPは、構造が性能スペックに見合うことを証明するために行われる製品試験です。

このような試験要件により、各種のアプリケーションに合わせた多様な試験は発展し続けています。

音響試験

高い騒音レベルは、精密機器や光学機器に大きな振動を生じさせる可能性もあります

発射の際に大騒音を伴うのは言うまでもないことですが、その非常に大きな騒音レベルによって本体と搭載物に著しい損傷を与える可能性があります。表面積が大きく、かつ軽量な衛星のサブシステムは音響加振に対してとても敏感です。音響加振によって顕著に表れる構造の応答により、特に低周波数領域で構造自体に致命的なレベルの応力を与える可能性があります。それと同時に高い騒音レベルは、装置のパネルやアンテナ、太陽電池パネルなどの衛星に取り付けられた精密機器や光学機器に大きなランダム振動を生じさせる可能性もあります。

音響試験では、発射時の環境を模擬するために、巨大な試験室内で高インテンシティ音響ホーンを用いて発した非常に高い音圧を衛星に浴びせます。この音響試験は実飛行の際に生じうるものに近い動的応答を試験サンプルに与えるように設計されています。通常2分間の試験で、このホーンを動作させるために窒素を必要とします。それほど大きな音ではないと思われるかもしれませんが、120 dBを超えれば痛みとして知覚されるにも関わらず、160 dBもの音圧を用います。試験室内にとどまることなどありえません!大まかにいえば、160 dBは多数のジェット機が数メートルの離れた場所で同時に離陸した時の音に匹敵します。

サイン掃引試験

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ESTECにあるような4基の加振器を組み合わせたシステムでは、4基の加振器の出力を1つのヘッドエクスパンダを通じて伝え、サイン波で最大640 kNの力を加えることができます

衛星の構造的弱点を見つけて、打ち上げ前の組み立て状態と試験の最中に構造の動特性が大幅に変化しないことを保証するために、サイン掃引試験で大きな加振器を使って衛星を加振します。衛星試験でよく行われるサイン試験の一つに共振探査があります。構造物には必ず共振して、振動の影響を増幅する周波数があります。そのため、共振が衛星のどこにいつ起きるのかを知っておくことは非常に重要です。

共振探査試験では、加振器で衛星を小振幅で振動させ、低周波数から高周波数まで掃引加振します。この試験は通常、対数掃引によって行われます。加振コントロールシステムが周波数掃引をしていくと同時に、応答振動を追従して記録されます。通常は入力信号と計測された応答との違いをみるために、伝達率や伝達関数をプロットします。応答と入力の比によって特定の構造共振の詳細を知ることができます。

他にも、サイン試験による耐久性試験があります。これは特定の回数、もしくは、通常数時間となる試験時間を定義し、その間試験体を上昇、下降掃引することによって様々な周波数で振動させるものです。共振探査試験と同様、この試験は音響試験のように実環境を模擬してはいません。その代わりに所定の高度に制御された方法で材料疲労試験を行うことができます。それと同時に、非常に高精度の材料性能予測も可能になります。

実環境をよりリアルに模擬する場合には、広帯域ランダム試験がよく使用されます。ランダム振動では定義された周波数帯を加振します。このとき、共振探査で見つかった試験体の共振周波数も相互作用の検討のために加えて加振することも多く、その結果を記録します。

爆発衝撃試験

打ち上げの切り離し時には高周波かつ高レベルの衝撃パルスが発生するため、精密機器はダメージを受けます

打ち上げロケットや積荷、宇宙船の設計には、打ち上げロケットの切り離し時や太陽発電パネルの展開時のようなミッションの間に数多くの爆発装置が使用されます。このような時に精密機器に重度の損傷を与えかねない高周波かつ高レベルの衝撃パルスが発生します。

たとえば、空のワイングラスをそっとたたくだけで大きな応答を得られる理由はみな知っています。たたいた衝撃によってグラスの固有振動数が励振されるからです。グラスの場合と同様、爆発衝撃が衛星の構造自体にダメージを与えることはほとんどありませんが、精密機器を搭載している構造への衝撃により、高周波の爆発衝撃エネルギーに敏感な電子部品の不具合の原因になる可能性は大いにあります。ミッションの生命線である機器へのダメージは深刻であるがゆえに、衝撃に対する構造の応答を突き止めることが必要です。

衝撃応答試験

PULSE Reflex Shock Response Analysis

衝撃応答試験はミッション完遂に不可欠なものと考えられており、精密機器が生き残れるかどうかを決定するだけでなく、打ち上げロケットに衛星を固定するのに最良な位置を決定する設計段階でもよく使われます。衝撃試験では短周期かつ高エネルギーの急峻なパルスが加振機システムや実際の爆発装置によって試験体に負荷され、その結果の動的挙動が記録されます。この記録データから「衝撃応答スペクトラム」が計算されます。このスペクトラムには衝撃に対するそれぞれの周波数における応答が列挙されており、その事象に対する構造の応答を深く理解するのに役立ちます。

実験室環境で各部品に対する爆発衝撃の影響を正確に再生、記録するには、どんな加振器でも爆発を正確に模擬することはできないという困難に付きまとわれます。結果として、爆発衝撃に対する構造応答を計測し、その際のピーク加速度というデータを、爆発衝撃の影響を示すために、簡単に周波数分析します。このような簡単な表記が、一自由度系(Single Degree Of Freedom:SDOF)です。これは、爆発パルスによって引き起こされた複雑な力の代わりに、一つのばねとひとつの質量で表現されるような一次元の構造の応答を示します。

この手法の意義は、爆発によるものと同じ衝撃応答スペクトラムを正確に再構築することで、加振器で衝撃パルスを再現できることにあります。また、構造設計を変更し、構成部品が変更前よりも衝撃を受けないようにできるかもしれません。その際、変更前後の衝撃応答スペクトラムを比較して、構造を事前に試験することも可能です。


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加振器は測定チェーンの一角をなしています

長年にわたり、ブリュエル・ケアーはお客様の無数の課題に対し先端ソリューションを開発し、多くの「世界初」で業界を牽引してきました。ブリュエル・ケアーは、サイン振動試験や長短の過渡試験、音響疲労試験など、衛星に対する総合試験ソリューションを提供しています。このソリューションは、高出力電磁石式加振器システム、増幅器、加振コントローラと高衝撃、振動トランスデューサからなる、完全な振動音響測定チェーンによって実現されています。ブリュエル・ケアーは高サンプリング周波数で数百チャンネル構成可能なデータ収集装置や衝撃応答スペクトラムソフトウェアのような高度な分析ツールも提供しています。

  • 高出力LDS電磁石式加振器(スリップテーブル、治具、増幅器)
  • 精密な加振コントローラ
  • 高衝撃用振動トランスデューサ
  • 高速多チャンネルモジュール式データ収集システム
  • データ収集/分析/記録ソフトウェアとデータベースソフトウェア



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