ルノー グループ
By Sheelagh Kononenko
13 Sep 2011
ルノーでは、バッチ計算解析の前に実施する測定セットアップやデータ処理、検証を簡素化することで、既存システムの機能の強化と実験室内で費やす時間を短縮する必要性が高まっていました。
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Automotive | Case Study
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ルノーのエンジニアにとってもう1つ重要なことは、新しいレポーティング機能でした。最終的には、作業手順や計算を簡略化することで、定型手順による測定で生じる無駄な時間を低減することを目標としていました。
ルノーの歴史
ルノーグループは、本社をフランスのBoulogne-Billancourtに置き、1899年にLouis Renaultと彼の兄弟であるMarcelとFernandによりSociété Renault Frèresとして創設されました。彼らは、ヴォワチュレット(Voiturette、小さな車)により参戦したモーターレースで勝利を重ね、すぐにその名を馳せることになりました。実際、ルノーの技術革新に対する評価は設立当初から高く、1902年には最初のターボチャージャーの特許を取得したことに加え、初の量産セダンを発表しました。1996年にルノーは民営化され、ルノーSAとなりました。今日では118か国に127,000人を超える従業員を擁する企業となっています。2010年には、ルノーブランドは、ルノー、Dacia and Renault Samsung Motorsやルノー日産を合わせ、世界中で7,276,398台を販売しています。
ルノーは、際立ったスタイルとともに車両の安全性の高さで知られ、EuroNCAP衝突テストで5つ星を達成した車両を最も多く生産する自動車メーカーでもあります。
パリから南へ40 kmに位置するLardyには130 haを超える敷地面積に、ルノーのパワートレイン開発のための主要な試験設備があります。そこでは、13 kmのテストコースや250を超えるさまざまな種類の評価ベンチがあり、約2,000人が従事しています。NVH部門では70人以上が、ヨーロッパで最も先進的な設備を駆使してパワートレイン系の騒音を低減する仕事に従事しています。
NVHの開発プロセス
| 「NVHの開発プロセスはエンジン・パワートレイン系側と車両側とで並行して進められます。」 |
開発プロセスにおいてNVHは重要です。ユーザーの印象は車両品質の重要な要素となります。エンジン音の場合、不快な騒音を低減し、必要な音をチューニングすることで心地よいサウンドへとデザインされていきます。Jean-Marc Kieffer氏は21年間ルノーでNVHに従事する技術者で、パワートレイン系騒音のエキスパートです。Kieffer氏は次のように話します。「NVHの開発プロセスはエンジン・パワートレイン系側と車両側とで並行して進められます。これらを最後に組み合わせた時に適切な解が得られるよう開発します。その過程で、パワートレイン部門は、パワートレインの振動騒音問題を解析し、要求仕様と比較しながらデザイン変更を行っています。この方法により、このパワートレインが車両に搭載されてユーザーに渡った時点で、決して問題を起こさないようにすることができます。」
挑戦
| 「排ガスの二酸化炭素量を低減しようとすると、エンジンの燃料噴射装置のパラメータを変更することになり、これが原因で騒音レベルを悪化させてしまう場合があります。また、他の法規制に相反してしまうこともあるため、両立する点を見つけ出さなければなりません。」 |
パワートレインやエンジンの音源位置を評価するため、ルノーGMPはブリュエル・ケアーのビームフォーミングやホログラフィ技術に着目し、ベンチマーク試験の標準化を進めました。
ルノーにとって標準化された音響パワーを計測してレポーティングすることは、車両の法規の観点からだけでなく技術面での競合性や品質の点からも重要です。Kieffer氏は「私たちは2つの主要な側面を考えています。1つは法規。例えば音圧レベルは車外騒音で必要な値です。もう1つはお客様の満足度です。さらに、排ガスやそれに関係する法規への対応もあり、これらは車両の騒音と相反することがよくあります。たとえば、排ガスの二酸化炭素量を低減しようとすると、エンジンの燃料噴射装置のパラメータを変更することになり、これが原因で騒音レベルを悪化させてしまう場合があります。また、他の法規制に相反してしまうこともあるため、両立する点を見つけ出さなければなりません。」
試験評価をさらに効率的に行うため、ルノーは既設のブリュエル・ケアーのシステムを強化し、実験室で費やす時間を削減しなければなりませんでした。ルノーはバッチ計算解析を行う前の測定セットアップやデータ解析、検証を簡素化したいと考えていました。もう1つの重要な要求事項は新しいレポート機能でした。最終的には、作業手順や計算を簡略化することで、定型手順による測定で生じる無駄な時間を低減することを目標としていました。
このためには、高い信頼性で短時間、かつ正確な技術で音源位置の特定や定量化を行うことが重要です。Kieffer氏は、「我々は、開発プロセスの最適化や、高価なシステムを用いるNVH測定のコスト低減および期間短縮に多くの時間を費やしています。プロトタイプに対して早期に解決策を検証できることは、短時間でのトラブルシューティング試験にも大きなメリットがあります。」ブリュエル・ケアーは、標準化された試験にかかる時間を短縮するために作業のワークフローや計算を簡素化する事に取組んでいます。
ソリューションの提案
ルノーの要求に応えるため、ブリュエル・ケアーは既存のフォーミングとSONAHの機能強化に加え、PULSE音源探査アプリケーションを組み合わせて提案しました。この音源探査アプリケーションは、エンジン・パワートレイン系の事前に定義したエリアの音響パワーを求めることを目的としています。このソリューションにより、ルノーは標準化されたベンチマーク試験に適した測定を行うことができるようになりました。ここでは、測定セットアップからExcelを使った解析結果のレポーティングまで、簡単で効率的なユーザーインタフェースを使って行うことができます。ブリュエル・ケアーの提案には、以下のものがありました:
- 簡素化したデータ測定のセットアップとGUI
- エンジンの各面に対しあらかじめ定義された計算セットアップ
- 自動計算のセットアップにより計測手順とポスト処理のワークフローを簡素化
- 定常ビームフォーミングとSONAHを組み合わせ同一データの計算が可能
- 夜通し実施されるバッチ計算の実施、管理
- 計算セットアップで音響パワー計算領域を定義
独自のマイクロホンアレイデザイン
マイクロホンアレイを用いて稼働状態のエンジンを測定する場合、突起物のある測定対象にアレイを近づけることは容易ではありません。これを解決するため、アレイの一部分を取り外すことができるようにしました。このアレイを用いることで、例えばドライブシャフトを避けてエンジンの横面全体を測定することができます。アレイの一部分を外した場合、フロントエンドの断線検出機能によってその部分が自動的に検出され、後の計算では自動的にこの部位を除外して処理されます。
| 「2、3年前は音響インテンシティ測定を行っていました。その時はパワートレイン系の測定にほぼ1週間を費やしていました。今では、音源の特定は1、2日で完了できるようになりました。」 |
ルノーはこの提案に満足しました。「ブリュエル・ケアーとの協調で最も重要な領域は、音源探査技術です。」とKieffer氏は言います。「2、3年前は音響インテンシティ測定を行っていました。その時はパワートレイン系の測定にほぼ1週間を費やしていました。ルノーとブリュエル・ケアーは音響パワー測定法の改善に共同で取り組み、新たなマイクロホンアレイを適用することを決めました。これまで5日必要だった音源特性の把握が、1、2日に短縮できるようになりました。その上、インテンシティではわからない情報も得ることができます。さらに高周波領域では、測定点が近接している場合でさえも、インテンシティより高い分解能の結果が得られ、音源探査の位置分解能を向上できるのです。非定常解析手法を適用すれば、加速など非定常状態での音源探査も可能です。我々にとっては、パスバイ測定時のようなエンジンの挙動も予測できる可能性が出てくるのです。」
10年来の信頼関係
ブリュエル・ケアーとルノーの関係は10年以上前に始まり、いろいろな機会で深まっていきました。Kieffer氏は「なによりもまず、ブリュエル・ケアーはマイクロホンのメーカーとして世界的に知られていて、高い評価を受けています。測定業務の基本として、品質の高いトランスデューサを持つ事は重要です。」と話します。「それが私たちの選択の理由でした。もう1つの理由は、インテンシティプローブであろうとマイクロホンアレイであろうと、音響パワー計測の分野でブリュエル・ケアーは最も先進的でした。それが、10年前にブリュエル・ケアーの非定常STSF(spatial transformation of sound fields)のホログラフィシステムを選択した理由です。その後も、ブリュエル・ケアーはシステムの改良を続け、ビームフォーミングとホログラフィを統合したシステムを提案してきた時には、我々は導入を決断しました。両システムを同じトランスデューサ、同じ収集システムで使うことができるメリットはとても大きく、測定中にセットアップを変更する必要がないために、生産性も向上しました。その上、PULSEプラットフォームを選択したことで、ハード的にもソフト的にも汎用性が上がり、アップグレード可能な持続的ソリューションを手にすることができました。最終的には、PULSE PDMツールのデータベースマネージメントを使って音と振動の相関を取る機能があることも決定要素となりました。」
これからの展望
| 「従来タイプのエンジンであろうとハイブリッドや電気動力であろうと、短期間で効率的な開発を行わなければなりません。それが私たちの業界で常に要求されるプレッシャーです。」 |
自動車業界では、急速に発展が進む電気自動車やハイブリッド車などの先進的で洗練された商品を開発する中で、コスト効果への意識が高まっています。Keiffer氏は、「私たちが直面している問題は、開発期間短縮への強いプレッシャーです。従来タイプのエンジンであろうとハイブリッドや電気動力であろうと、短期間で効率的な開発を行わなければなりません。それが私たちの業界で常に要求されるプレッシャーです。」と言います。さらに続けます。「状況の変化が早いため、時間的な余裕はありません。エネルギー問題や環境汚染の問題など、できるだけ早く解決策を見出さなければならないような重要な課題がいくつもあります。迅速な対応が必要とされ、これまで以上に効率的であることが求められています。」
しかしながら、試験時間だけがルノーの抱える問題ではありません。ルノーはアレイを使った測定で効率化にほぼ成功しています。Kieffer氏によると、「次の取り組みは、データのポスト処理の改善です。これは、近年、大量のデータを取り扱うようになってきたことが一因です。例えば、今ではパワートレイン系の挙動を非定常状態で計測することが可能になりました。しかし、計測データのポスト処理は時間のかかる作業です。これから取り組むべきは、データのポスト処理とデータ保存の機能を改善することです。」と話します。
ハイブリッドやバッテリ駆動の車両を創り出す技術によって、自動車業界ではNVHに対する認識が変化しています。Kieffer氏は言います。「電気自動車に試乗すると、すぐにこれまでのガソリンエンジン車とは全く違ったサウンドであることに気付くことでしょう。高周波領域の測定技術を向上させ、新たな解析手法を開発しなければならないことは明らかです。電気自動車の新たな問題として挙げられるのは、他のコンポーネントに比較して電動モーターの音圧レベルが非常に低いことです。この騒音を分析したり音源の評価・同定を行ったりする能力は、不可欠な要素になるでしょう。近年、ブリュエル・ケアーは我々の要求に応じてビームフォーミングシステムに次数フィルタオプションを追加しました。この機能は、エンジンの開発に重要です。」
| 「コストのかかるプロトタイプの数を減らすことができます。また、試験ベンチでの業務時間を短縮することもできます。」 |
自動車業界での新しい技術に加え、データや画像を短時間にやり取りできることも必須条件であるとKieffer氏は考えています。彼は言います。「これは重要なことです。なぜなら、他のメンバーと議論する時、さまざまな周波数やエンジン回転数における音源をアニメーションやマップで簡単に見せられれば、話は早く済みます。オーディオファイルを用いる方法もあるでしょう。」
その結果、アニメーションやシミュレーションは重要性を増しており、計算精度を向上することで開発プロセスを短縮できる可能性を持っています。アニメーションやシミュレーションの活用方法は他にもあります。「開発プロセスを変更することで、開発の初期段階で多くの計算解析を行ない、後の段階で減らすことができます。」とKiefer氏は話します。「つまり、コストのかかるプロトタイプの数を減らすことができます。また、試験ベンチでの業務時間を短縮することもできます。理想的な開発では、新しい計算手法を開発、検証するために、エンジン放射音のような複雑な現象解析でも、正確な測定結果を提供することが求められます。これからの数年、ルノーとブリュエル・ケアーが、刺激的な挑戦に立ち向かっていく必要があることは間違いありません。次世代の車両の品質と性能の向上に取り組んでいく過程で、両者の協調関係はより強固なものになっていくことでしょう。」
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