ブリュエル・ケアー マイクロホン、50年の軌跡

by Niels Bøgholm, Transducer Product Manager
19 Apr 2010

購入した計測用マイクロホンはただの小さな金属のデバイスに見えますが、馬鹿にはできません。一品ごとに数多くの工程と、細心の注意、そして蓄積された知識が隠れています。


Technology

始まりのその前

多くの方は驚かれるかもしれませんが、約半世紀前、ブリュエル・ケアーはマイクロホンの製造業者でさえありませんでした。1943年にPer V. Brüelはブリュエル・ケアーにとって最初のトランスデューサ(それはのちに4303型となる加速度ピックアップでした) の設計をしていました。当時、ブリュエル・ケアーのような小さな会社にとってマイクロホンの設計と製造はあまりにも複雑すぎると考えられていました。そのため、ブリュエル・ケアーはデンマークのOrtofon社のマイクロホンを販売していました。

1950年にOrtfon社は直径36mmのコンデンサーマイクロホンを発表しました。これを利用してブリュエル・ケアーはいくつかの成功を収めましたが、50年代半ばには計測用マイクロホンを自社開発しなければならないと感じていました。

かなり初期の頃からバイアス方式のコンデンサーマイクロホンが最適な選択だということは明白でした。このマイクロホンの原理は1916年にE. C. Wenteにより発明され、その時代にはその周波数範囲とレコーディング品質は革新的でした。

200 Vの偏極電圧と高入力インピーダンスアンプが必要になるなど、実用上の制限によりコンデンサーマイクロホンの普及は長年にわたり限定されていました。

始まり

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計測用マイクロホン

最初にブリュエル・ケアーが開発し、製造した計測用マイクロホンは4131型と4132型でした。実際の直径は0.936インチ(23.7mm)にもかかわらず、1インチマイクロホンと呼ばれていました。それらは若く賢いエンジニア、Gunner Rasmussen氏と創業者達との協力により開発されました。Viggo Kjær氏は新しいマイクロホンの設計目標をアメリカ規格協会 Z 24.4-1949(校正機関用一次標準マイクロホン)に準拠することに決めました。

4131型と4132型の構造はエレガントでシンプルであるばかりでなく、当時では最先端のマイクロホンW. E. 640AA型 (ここから奇妙な1インチサイズを継承しています) などと比較しても利点がありました。

しかし、より多くの場合に使える4133型(自由音場)と4134型(圧力音場) の1/2インチマイクロホンがすぐに発表されました。かなり早い段階から測定の妥当性と高品質であることを確かなものにするために、正確な校正方法が不可欠な要素であることを理解していました。4141型マイクロホン校正装置(相互校正)とUA0023静電アクチュエータは2つの新しいマイクロホンと一緒に発表されました。それ以来ブリュエル・ケアーは、校正業務と国際標準化作業に真剣に取り組んでいます。ところで、UA0023は真の生き残りです。今ではリリースから50年以上経過していますが、未だに私達の製品レンジの一つです。この注目すべき点は、ブリュエル・ケアーのマイクロホンが50年以上にわたり、同じ校正ツールと同じ自由音場補正を使用でき、ほぼ変化しないという、品質の高さの証明となっていることです。

もう一つの興味深く重要な点は、細部への設計のこだわりであり、それは常にブリュエル・ケアーの特徴となっています。それまでのプリアンプはかさばっていて、マイクロホンよりも大きな直径になるため、音場を乱すことがよくありました。4131型と4132型用の1インチプリアンプはカートリッジにフィットするだけでなく、音場の乱れを最小限にするように設計されていました。このような細部への気配りは、例えば2250型や2270型などのハンドヘルド分析器にも見られるように、全てのブリュエル・ケアー製品において見ることができます。

伝説の始まり

これらの新しいブリュエル・ケアーのマイクロホンは、比類ない精度と安定性を持ち、これにより計測用マイクロホンの分野において主導的な地位を確固たるものにしたことは疑う余地もありません。そしてその地位は常に製品レンジの改良と、マイクロホンファミリーの独自の新しい製品リリースにより、常に強化されています。

屋外騒音

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屋外騒音モニタリングターミナル

1963年からブリュエル・ケアーは、空港騒音モニタリングシステムなどの用途に使用できる常設の屋外測定用のマイクロホンを提供してきました。この分野は継続して開発、統合されており、近年ではオーストラリアを拠点とするLochard社を買収し、Noise Sentinelをリリースしています。この製品は従来のハードウェアやソフトウェアの組み合わせとは異なり、お客様に購入していただくのは測定結果だけです。ブリュエル・ケアーが全ての機器を所有し、稼動させ、維持します。しかし、この場合でも、ソリューション全体の最前線は信頼できる高品質のトランスデューサであることに変わりありません。

限界を超える
音の範囲は多くの場合、上限周波数20kHzで最大音圧レベル140dBです。かなり初期の頃、空力測定や瞬間的な騒音の測定では可聴範囲を超える音響測定の必要がありました。この場合の解決法は1/4インチや1/8インチ径のマイクロホンでした。実際に、4138型 1/8インチマイクロホンは1967年に発表され、今でもブリュエル・ケアーの製品レンジの一つです。

空気中だけではありません

音波は、一般的には空気中を伝搬するものと考えられています。しかし、それは水の中でも伝搬します。水中音響はますます重要な分野になってきていましたが、ブリュエル・ケアーは長い間その分野を静観していました。1972年にブリュエル・ケアーは加速度ピックアップで培った圧電素子の技術と音響技術の知見により、最初のハイドロホンである8100型を発表しました。

今では、ハイドロホン、プリアンプ、水中用ケーブル、特殊な水中アプリケーション、そしてもちろんハイドロホンの校正システムも含め、水中音響の分野に必要なすべてを提供しています。

Yes!

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4160型
ブリュエル・ケアーが校正機関用標準マイクロホンWestern Electric W.E. 640A の後継機種の開発要求を正式に受けたとき、即答したのが "Yes!" でした。4160型はその成果です。このマイクロホンは、カプラーによる相互校正に適した高精度なフロントキャビティ(前窩(か)部)を備えています。10年後、同じ目的の4180型1/2インチマイクロホンを発表し、その日以来、一次標準精度のマイクロホン校正はブリュエル・ケアーの代名詞となりました。

ゼロより小さい
聴覚のしきい値は20 µPaまたは0 dB(SPL)の動圧力として定義されます。しかし、ブリュエル・ケアーはゼロレベル以下の音を測る要求により、1984年に4179型と2660型の組み合わせで超低レベル音響測定システムを発表しました。この低ノイズ用に最適化された1インチカートリッジと特別なプリアンプの組み合わせはA特性の自己ノイズが-5.5dBという仕様で、この値はいまだに打ち破られていません。

注目してください!

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4954-A型 1/4インチ エレクトレット自由音場型TEDSマイクロホン

計測マイクロホンの200Vの偏極電圧は、たいていその高電圧がゆえにポータブル機器での使用や湿気の多い環境に存在することに対し、不満の原因となります。それを解決するのは外部偏極電圧を必要としないエレクトレットマイクロホンを計測チェーンの中に組み込むことです。1962年頃にはエレクトレットマイクロホンのプロトタイプは存在していましたが、安定性に問題があり、高精度な計測用マイクロホンには適していませんでした。

ブリュエル・ケアーでは70年代に伝説のErling Frederiksen率いる特別チームが結成され、エレクトレットマイクロホンの実験が数多く行われました。その結果、1979年にバイアス電圧の不要なマイクロホンである4155型と4175型の2機種がリリースされました。これらのバックエレクトレット型マイクロホンは金属ダイヤフラムを持ち、分極型マイクロホンの特徴である外部偏極電圧は不要であることと、実績のある安定性の両方を備えていました。

このプロジェクトの原理とノウハウは1993年にリリースしたファルコンシリーズマイクロホンでも役に立ち、さらに洗練されました。このシリーズの4189型や4190型、4191型などは、現在の主力商品となっています。ファルコンシリーズマイクロホンはステンレス合金のダイヤフラムにより、マイクロホンの寿命を飛躍的に延ばすことができました。ファルコンシリーズのリリースまでは、ほとんどのマイクロホンのダイヤフラムはニッケルを使用していたので、高湿度環境では問題がありました。

よりスマートなソリューション

今でこそ、TEDSトランスデューサは一般的になっていますが、20年前にはそれは夢でした。

エレクトレット コンデンサー マイクロホンの実用化は、ポータブル機器と定電流駆動技術(DeltaTron)へ道を開きました。ここでは高価な7芯マイクロホンケーブルは安価な同軸ケーブルへ置き換えられ、プリアンプへの供給電圧と信号は同じラインを使用します。

最近の多くの"スマート"トランスデューサは、IEEE1451.4に準拠したTEDS(トランスデューサ電子データシート)トランスデューサのことです。言うまでもなく、初期のTEDS標準化委員会はTorben R. Lichtはもとより他のブリュエル・ケアーの強力なサポートにより運営されていました。現在、TEDSトランスデューサは一般的になっていますが、20年前にはそれはただの夢でしかありませんでした。

音響インテンシティ

ノイズの多い環境での音源同定は長い間不可能と考えられてきました。音響インテンシティ技術の出現は、多くの場合に解決法となりましたが、実際に信頼できる結果を得るためにはかなり精度良く位相整合されたペアマイクロホンが必要とされます。

文書化された品質と長期にわたり安定しているマイクロホンはすでにブリュエル・ケアーの一部でしたので、1982年に発売された世界初の3360型ポータブルインテンシティ分析器で必要とされる3519型音響インテンシティプローブの開発は小さな一歩でした。

音の画像?

音を測定しているのに、どうして音場の画像は撮らないのでしょうか?これは、1986年に最初に音響ホログラフィシステムがリリースされたときのアイデアでした。これらのアプリケーションは、マルチチャネルシステムと、それに付随するアレイマイクロホンと呼ばれるコストメリットのあるマイクロホンを必要としていました。最近のビームフォーミングシステムではこのようなマイクロホンが数十本必要となります。

パンケーキのように薄く

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車のドアに取り付けられたサーフェスマイクロホン

2003年に発表された4948型はパンケーキのように薄い世界初のサーフェスマイクロホンです。このマイクロホンは、Airbus社からの要求で開発され、他の航空機はもとより主にAirbus A380の開発のために集中的に使用されました。厚みわずか2.5ミリメートルのこの製品は音響振動測定の世界で未だに唯一の製品です。

4949型は、自動車アプリケーション向けに最適化されたサーフェスマイクロホンです。このマイクロホンは、その卓越したフォームファクタと品質により、当初開発されたときには誰も想定していなかった多くのアプリケーションが見つかりました。サーフェスマイクロホンは、「総チタン」と言うまた別の新技術が適用されました。

計測用マイクロホンにチタンを使用することで、他にも独特な製品がリリースされました。その1つが1/2インチのローノイズマイクロホン4955型です。4955型は4179型の性能には及びませんが、1/2インチカートリッジと1/2インチプリアンプ(どちらもチタン製)により、スリムでスマートです。チタンは、磁場に対する感度が無く、非常に低いダイヤフラムの質量、耐腐食性などの付加的な利点があります。

どの音場?

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世界初の 4961型 マルチフィールドマイクロホン

測定場所はどんな種類の音場でしょうか?そこでどのマイクロホンを使用するべきでしょうか?

このことは多くのユーザーが自分自身に問いかけていますが、たいていの場合、間違ったタイプのマイクロホンを選択してもそれほど深刻ではありません。しかし、常にそうだというわけではありません。間違ったマイクロホンを選択すると、高周波が顕著な測定信号の場合には深刻な事態になります。

自動車関連では、軽量な遮音材や、より小さいエンジンでは結果的に高周波が支配的な周波数スペクトラムになります。もう一つの課題は、未知の音場で、複数または非定常の音源が存在する場合です。

これらの課題や、"正しい"とか"間違った"マイクロホンのジレンマを解決すために、ブリュエル・ケアーは2009年に全く新しいコンセプトのマルチフィールドマイクロホンをリリースしました。世界初のマルチフィールドマイクロホン、4961型は、その小さなサイズと巧妙なデザインにより、音場の性質によるいかなる誤差をも無視できる程度にすることができるので、ほとんどのアプリケーションで従来の1/2インチマイクロホンと置き換えることが可能になります。

舞台裏

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クリーンルーム

何十年も前からブリュエル・ケアーはダイヤフラムの背後空間が、マイクロホンの品質、特に長期安定性やノイズレベル性能を決定することを理解していました。

バックプレートとダイヤフラムの間の塵や粒子は漏電や放電を引き起こすことがあり、これがノイズの原因となりますが、エレクトレットマイクロホンの場合、最終的には感度の低下をもたらします。

このため、我々のマイクロホンはクリーンルーム環境で組み上げらています。実際に、いくつかの最も重要なプロセスはISO1 (1立方メートル当たり10または100nm以下の粒子) のクリーンルーム内の層流ベンチで行われます。

マイクロホンの部品数は10個程度と少ないですが、製造プロセスは、研磨、洗浄、チャージ、エージング、試験などその何倍もあります。そして、最終的に最高水準の国際規格に準拠した校正が個別に実施されます。

多くのブリュエル・ケアーのマイクロホンは、個別の校正データと、PULSE分析システムでリアルタイムに周波数特性を補正するREq-X機能で使用可能な補正データが含まれたミニCDが個別に提供されます。

確かな仕事を

多くのプロセスの知識や長年にわたる計測用マイクロホンの製造に関する研究を考慮しなければ、高品質計測用マイクロホンの価格は高く感じられることでしょう。しかし、価格が高いか妥当かを判断するためには、ユーザーの仕事の価値を考慮しなければなりません。測定に欠陥があった場合に、提供している製品やサービスにどれほど影響を及ぼすかは計り知れません。

風洞実験や飛行試験のコスト、また再現性のない計測による結果の遅れ、エキスパートのサポートなどを合わせて考慮すれば、ブリュエル・ケアーの計測用マイクロホンのプレミアム価格はユーザーが実施された投資の中でも最高のものの1つと考えられます。

 



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