2009年2月
豆知識で何度かdBの使い方を議論してきましたが、熟知しているつもりであっても、混乱や誤用することがあります。「dBは単位?」という、素朴な疑問にどのように答えましょうか。
単純回答は「dBは相対値を表すもの」ということです。しかし、例えば「dB re. 20μPa」、「dB re. 1 pW/m^2 」、「dB re. 1 pW」は、それぞれ音圧レベル、音響インテンシティレベル、音響パワーレベルに使われるものです。dBの後に書かれている re. はreference(基準値)を省略したもので、それには物理単位が付けられています。
このような記述が付けられたdB値は物理量の絶対値に換算できます。X dB re. Y Z の場合、絶対値は10^(X/20)・Y [Z] という計算です。音圧の場合は、10の20分のX乗という比率(倍数)に音圧の基準値を掛け算します。例えば94 dB re. 20μPaであれば
10^(94/20)×2×10^-5 = 1.002 [Pa]
となります。このように、本来dB値は相対値を表すものですが、基準値の単位が明確であれば、絶対値と同等の扱うことができます。注意として、dBは相対値を表すためのものなので、「間違えないように正確な表現方法使ってください」というだけのことですが、せっかくなので別の視点から、面積のdB値の話をします。
音響パワーWを放射する点音源を反射のない自由音場にあるとして、音源から距離r離れた仮想の球面を考えます。その表面Sを通過する単位面積あたりの音響パワーは、音響インテンシティ(音の強さ)Iと呼び、その単位はW/m^2です。
この関係を利用して音源の音響パワーを計測することができます。
音源の音響パワーWは、音源を囲う面を通過する音響インテンシティIとその面積Sの掛け算(W = I・S )で求められます。つまり、音響放射の結果として得られる音響インテンシティ(音圧による近似値)とその測定条件を使って、原因である音響パワーを決定しています。
詳細の議論は省略しますが、注目点はこの掛け算は対数(dB表現)を使って、計算方法を足し算に変換できることです。様々なdBを使うことになるので危険ですが、音響パワーレベルのdB値は、音響インテンシティレベルと面積という2つのdB値の足し算で計算できます。
ここで、音響インテンシティが通過する測定面積が(補正項として)一定であれば、音響インテンシティレベルが5 dB増えれば、音響パワーレベルも5 dB増えることになります。つまり、dB値の変化分(相対値)は直接に1対1に対応するため、この関係は工学的ツールとして重要です。
さらに、自由音場や半無響室などの音場環境では、音響インテンシティレベルは音圧レベルで近似できるため、このような音場においては、音圧レベルで-10dB減少する騒音対策を、音響パワーレベルにおいても-10dBを見込めることなります。
このような議論は、音源を点音源として仮定することで成立しています。
実際には音響エネルギーの指向特性も異なるので、音圧(音響インテンシティの近似値)の測定点は、精密法ISO 3745(JIS Z8732)実用法ISO 3744(JIS Z8733)規格などには9点、10点などが定義されています。つまり、平均表面音圧レベルで-7 dBとなれば、対応する音響パワーレベルも-7 dBとなります。これらの規格では、その他に補正としては、暗騒音補正(K1)、音場補正(K2)が定義
これらの規格には、音響エネルギー[J]と音響エネルギーレベルのdB表示のための「dB re. 1 pJ」が定義されています。これは、単発の衝撃音などを測定するためのものですが、まだ一般的ではありません。
計測対象の音響物理量のdB表示を間違えないことは当然ですが、音響パワーの計算プロセスにおいて、面積をdB表示することに注目してください。実際には、音源までの距離を反映させるための、面積補正項ですが、工学的(音響パワーレベルの絶対値など)には意外と重要です。