SN比と暗騒音

2009年1月

 今回は、望ましい測定精度を得るために、SN比と暗騒音の関係を考えて見ましょう。

 SN比とは信号対ノイズの比のことですが、信号伝送経路などにおける対象信号に対する雑音(ノイズ)の影響を表するために使われています。比率で定義された相対的な情報ですから、dBで表示されることもあります。また、多くの場合、特定の伝送路や装置の性能を表現するために使います。

 一方、暗騒音(background noise)は、測定対象の信号がない場合のノイズのことで、背景雑音と呼ぶこともあります。これは、絶対値としてノイズの振幅を表すものです。騒音・振動計測の暗騒音の内容は、測定対象を除く周辺音場に起因するものと、測定器の個別要素(マイクロホン、プリアンプ、フィルタおよびアンプ)に起因するもの(自己雑音)の両方を含むことになります。一般には、実際の騒音や振動測定の有効性を立証するために、測定対象の測定の前後における暗騒音を測定しておきます。

 心配すべきことは「対象の信号がどれだけノイズの影響を受けるか?」ということです。その影響の程度を把握するためにSN比が使われます。dBを利用した測定の場合には、自乗値の振幅比(パワー比)は、3.16(√10)倍のSN比は5dB、2倍は 3dBという表現になります。一般にこの程度のSN比は十分な測定結果を提供しません。対策としては、音源に近づくなどの方法で対象信号の振幅を増強するか、音場に起因する測定音場の周辺の暗騒音を減らすこと、または測定器に起因する場合は測定器の能力を向上させる(高感度センサーの利用など)が考えられます。これらの方法で改善できていない場合には、暗騒音の影響を計算にて補正することになります。ただし、SN比3 dB未満の場合における暗騒音補正の計算は、対象信号の振幅が暗騒音(ノイズ)信号の振幅に比べて小さい状態になるため、一般に推奨される方法ではありません。

 では、例として真値が90 dBに対して、90.4dB、90.1 dB、90.04 dBなどの3種類の結果を得る、測定状況を考えてみましょう。それぞれの測定状況の暗騒音レベルは80 dB、74 dB、70dBとなり、また、それぞれのSN比(真値と暗騒音とのレベル差)は10dB、16dB、20dBに対応します。

 つまり、90dBの結果を得るためには、SN比10dBとなる80dBの暗騒音であれば十分です。しかし、より高精度である90.0dBを望む場合には、SN比20dB以上、つまり暗騒音70dB未満が必要となります。

 というわけで、測定の結果を後で検証するために、実際の測定と暗騒音の両方は重要な証拠データとなります。さらに、測定の前後に実施される(有効期間中の校正器による)校正結果も保存されていれば、その測定の正当性は十分に保証されます。現場測定の場合でも、校正、測定結果、暗騒音(SN比)の3点が確保されていれば十分です。

 現場の測定者に求められるスキルは、計測環境による影響を最小にして、要求される測定の再現性を得ることです。Dyn-X(ダイナミックレンジ160 dB)のように、近年の測定器の能力は進化しているため、測定者に不当に課せられてきた過度なストレスを減らすことができます。また、高ダイナミックレンジのスペクトル表示のメリットは、センサーの感度が不当に低すぎることに起因するアンダーレンジの状態を知ることができます。しかし、各種の規格はその最低要件を記述していますが、すべての状況を網羅している訳ではないので、その基本原理を体得することも重要でしょう。

 残される課題は、校正、SN比確保による暗騒音の影響がないとしても、「再現性」のチェックです。これは、信号の周波数分析に適用する帯域幅(B)と平均時間(T)にて決定されるBT積に依存します。暗騒音と対象信号の測定の両方に共通することですが、2回の測定結果が同じ値を得られるように、最適なBT積に調整します。

 最後に、今回の豆知識は、dB値の測定におけるノイズレベルの影響を考えてきました。これは、騒音や振動の周波数分析器を利用してノイズのスペクトル表示にも適用できる内容です。しかし、音響振動センサーによる測定時に音や振動の時間波形を記録して、試聴するという応用には適用できません。聴覚による官能検査には、より優れたSN比(96から100 dB)、つまりセンサーの低ノイズレベルと測定アンプの広いダイナミックレンジが
必要になります。

SN比と暗騒音
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