2008年9月、10月
現代の生活では、回転や往復運動を利用する機械や装置を多数利用しています。このような機械では、回転や往復運動によって、エネルギーを効率良く使うことが可能になります。現在、社会的要請である軽量化や高性能化などの各種の目的や機械構造の動作原理によって事情は異なりますが、それらの共通事項は、元の位置に戻って何度も繰り返して運動することです。つまり、このような回転や往復運動で引き起こされる振動や騒音の特徴は、周期現象であることです。ロケットのように、一方的な併進運動は比較的特殊なケースです。
一方、エネルギーを使って仕事をさせるためには、負荷の大小にも依存しますが、エネルギーを外力として供給しつづけなければ、止まってしまいます。搭載している燃料が消費されて自重としての負荷が減ることもありますが、一般には用途に応じた一定負荷に対して運動しつづけられるように作られています。
さて、意図的な負荷の追加や効率を上げることになれば、短時間に多くの回転や往復運動を作用させることになります。一般にこのような場合に、騒音振動の発生頻度も変化することになります。反復現象の基本周期が変化すれば、それに対応して、周期の逆数として定義される周波数(または振動数)も変化します。
このような周波数の変化がもたらす効果として、回転や往復運動に起因する周波数と構造の共振や空洞の共鳴の共振周波数と一致することになり、振動や騒音が予想以上に大きく発生することになります。加振としての周波数と構造の形状で決まる周波数に別けて議論しなければなりません。
もちろん、都合良く、それらの周波数が一致しないこともありますが、騒音振動の現象を再現性良く捕らえて、発生原因を調べるためには、このような回転や往復運動においてはその基本周波数、つまり回転数は重要です。さらに、振動運動の波形が正弦波ではないため、この周波数を基本波とした高調波(回転次数)の情報にも注目しなければなりません。
そこで、回転や繰り返し現象を正確かつ専門性をもって表現するためには、専用の定義が利用されています。最もよく利用されているのは、1分あたりの回転数によって、回転の速度(またはスピード)を表現する方法で、RPM(round per minutes)と呼ばれています。(小文字でrpm、またはr.p.m.という場合もあります。)この表現は、国際単位系(SI)の趣旨に反していますが、次元的にはは、周波数や振動数と同じように時間の逆数(1/sec)の次元です。60秒における回転の数として、10 Hzは600 RPM、200 Hzは12,000RPMと表現されます。
さらに注意したいことは、回転や往復運動の周期(または周波数)は物理現象として連続的に変化することです。機械システムは慣性(運動する物体は直ぐには止まれない)という基本性質があります。回転や往復運動を制御する信号がステップ的に加振したとしても、実際の運動は質量の大きさに応じた慣性力が作用して、アナログ的な挙動を行います。このことは、周波数分析器の都合に合わせて変化するのではなくて、時間と共に回転の周期は徐々に短く(回転数は徐々に高く)変化することを意味します。
そこには、瞬時周波数と平均周波数、または、瞬時回転数と(単位時間の)平均回転数という瞬時的変化率と(単位時間の)平均変化率を明確に使い分けるという考えが出てきます。つまり、機械の実運用時を想定して、丁寧に回転数の変化と引き起こされる応答を測定し、評価することは重要です。
逆に、短時間に最大回転数まで上昇する場合には、共振として増幅する前に回転数が高速に変化するような現象であれば振動や騒音問題にならないこともあります。
これに対して、モード解析や実稼動モード解析による構造試験技術は、加振側ではなくて、構造や空洞における共振や共鳴の情報を知るために使われています。回転(回転数)の変化によって生じる、振動と騒音問題の解決には、加振側と共振の両者の結果から、適切な解決策を検討することになります。
手法として、古典的には、ストロボスコープやタコ信号による回転次数比分析(回転に基づくサンプリングによる次数分析)が知られています。また、新しくは、実稼動振動形状(ODS)、クランクアングル解析に基づく音響ホログラフィやビームフォーミングなどの音源探査技術においても、回転の基本周波数とその高調波(回転次数)に注目して、音の空間分布を調べます。つまり、騒音振動の原因が加振側であることを想定して、回転と回転数に注目して実態を分析する技術です。
このように回転情報は非常に重要であるため、測定信号から回転情報を同定する方法(B&K社PULSEのOrder分析のAutoTracking)は、回転次数の主要高調波が連続的に変化する仮定に基づいて、振動や音響信号の中から回転情報を抽出する手法です。(これはタコ信号を直接に利用できない場合に効果的です。)
最後に、(前半で)RPMを”Round Per Minutes”の省略語と説明しましたが、これは間違いではありませんが、古い表現でした。規格書などでは、”Revolution Per Minute”が広く使われています。(ご指摘いただいた方に感謝いたします。)
