フィルタ分析
2007年10月、11月
一般に、フィルタという言葉は日常生活においても、エアコン、ドリップコーヒー、掃除機、タバコなどで、不要なものを除去する目的でつかわれています。騒音計や振動分析においても目的に応じて各種のフィルタが利用されています。
フィルタ分析を用いた周波数分析の帯域幅と関係は、コーヒーのドリップフィルタにおいても、コーヒー豆の挽き方やお湯の量、フィルタの穴の大きさや数に依存して、最初の一滴がどれぐらいのタイミングでどれぐらいの量が継続して出てくるかが異なることと似ています。シャワーのシャワーヘッドの穴と水圧の関係のアナロジーが適切かもしれません。穴の径を変更できるタイプによって、得られる水の勢いは大きく変わります。
測定をうまく実施させるための配慮から、自動的にフィルタ分析が利用されているもの(ハイパスフィルタ、エリアシングフィルタなど)もありますが、特定の意図をもって利用するもの(バンドパス、ローカット、ハイパス、バンドストップ、バンドリジェクト)もあります。ここでは、利用者の立場から見て、知っておくと得するフィルタ分析に共通する注意を取り上げます。
センサーの出力信号に含まれる、直流(0 Hz)付近の不要な信号を除去するために、0.2Hz、2Hz、10Hz等のカットオフ周波数にて、ハイパスフィルタが利用されます。(カットオフ周波数は通過帯域から-3dBまたは-1dBの振幅減衰で示すこともあります。)また、分析対象となる周波数範囲を大きく超える周波数成分の存在が、サンプリングに伴って低周波数の帯域に折り返すことを防止するために、事前に高周波数成分を除去しておくためのフィルタ(アンチエリアシングフィルタ)などはその良い例です。一度、正しく設定しておけば、日常の測定において、その存在は忘れても大きな問題になることはありません。しかし、時間波形を議論する場合に、その存在が重要となることがあります。
一方、このフィルタ分析は周波数領域において特定の意図をもってフィルタ分析が利用されます。例えば、ローカット(つまりハイパス)フィルタ、ハイカット(つまりローパス)フィルタ、さらに特定の周波数帯域を通過させるためのバンドパスフィルタなどです。
どのようなフィルタ分析であっても、その注意点は、時間信号に適用されたフィルタ分析はその特性は周波数領域に適用されると同時に時間領域にも適用されることです。その要点は、「周波数領域に対する加工は必ず時間領域にも影響する」という普遍的な時間と周波数の大原則が存在することです。両者は相互に関係するため、一つの領域に対して、極端な関係を利用すると、そのリバウンドが別の領域に現われます。
フィルタ分析においても、そのフィルタの特性が周波数で規定されているとは言え、その影響は必ず時間の領域にも現われます。いくつかの例を紹介します:
温度変動を受けるセンサーを利用する場合、0.2 Hz または2 Hzのハイパスフィルタを利用します。この時、それぞれのフィルタを利用した測定回路は動作直後に、5秒、0.5秒後でなければ安定状態になりません。0.1Hzを正確に測定するためには、10秒以上をかけて、静止状態になることを待ってから測定を開始して20-30秒の平均時間が必要となります。ディジタル機器であったとしても、この周波数帯域を正確に測定するために、同じ条件を満たさなければなりません。
バンドパスフィルタでは、通過帯域幅とその前後のフィルタのスロープなどでその特性(周波数特性)が規定されます。同時にその時間特性(インパルス応答)も決定されます。定常信号の場合であれば、周波数分析の結果として出力の振幅値の大小だけを見ておけばよいわけですが、時間とともに振幅が大きく変化する非定常信号では、適用しているフィルタ分析の時間特性の影響を含めて結果が出てきます。
例えば、衝撃音、床衝撃、ドアスラムなどの分析結果は、分析を開始しても、バンドパスフィルタの応答時間(中心周波数の逆数に相当する時間)の後に、その最大振幅が得られることになり、その特性もバンドパスフィルタを構成するスロープ特性の影響を受けることになります。つまり、分析に用いるバンドパスフィルタの時間特性が同じもの(つまり同じ分析条件)を使わなければ、測定結果を比較することはできないことになります。

