ダンピング

2008年6月

 一般に、「ダンピング」という言葉を出くわすと、頭に浮かぶのは「不当廉売」のダンピング(dumping)かもしれません。ここで取り上げる、ダンピング(damping)は音響・振動の専門用語の1つです。これは、スペルが少し違うのでご注意ください。それだけでも、豆知識としては十分ですが、機械系の専門用語である「減衰」ではなくて、「ダンピング」としたのは以下のような理由からです。ここで言うダンピング(damping)は、振動や音のエネルギーを熱エネルギーに変換して散逸する現象ですが、対象のエネルギー減衰の程度を適切な単位を使って、正確に利用できる形にすることが重要です。

 近年、多用されているシミュレーション技術を駆使しても、ダンピングの情報までは正確に得られないので、サンプルによる測定や検証のために、数値化された減衰効果の評価、つまり試験による測定または性能確認が非常に重要になります。また、音と振動に共通するエネルギー減衰を効果的に議論するために、ダンピング(damping)という言葉は、減衰振動も吸音の両方についても1つの言葉でカバーできるので都合が良いわけです。

 本題です。ダンピングの表現や計測方法は様々なものがあります。以下に示すパラメータは、共振周波数f0(=減衰周波数fd、減衰の少ない場合)を使って、互いに数値を変換することができます: 
3dB帯域幅⊿f[Hz](周波数応答関数の共振周波数において)
 

 3dB帯域幅

⊿ω [Rad/s]

(=2π⊿f)

 減衰周波数

fd [Hz]

(=⊿f/2)

 損失係数

η (イータ)

(=⊿f/f0)

 減衰比

ζ (ツェータ)

(=⊿f/(2f0))

 クオリティファクタ

Q

(= f0/⊿f)

 減衰率

σ (シグマ) [s-1]

(=π⊿f)

 時定数

τ (タウ) [s]

(=1/(π⊿f))

 残響時間

T60 [s]

(=6.9/(π⊿f))

 ディケイレート

D [dB/s]

(=27.3⊿f)

 対数減衰率

δ (デルタ)

(=π⊿f/f0)


 これらは、共振周波数とそのダンピングの情報を都合の良い方法に換算している訳です。単位のないものは無次元量ですので、数字だけが示されます。時間分解能と周波数分解能の関係のように、互いのパラメータ間で逆数の関係のものもあります。また、音響計測で有名なものや、電気回路でおなじみのものも含まれています。(詳細はB&K Technical Review 1994-1(BV0044)を参照ください。)

 このような方法が適用できるのは、減衰が少ないために共振が強く支配のものが測定対象です。これらの測定は、2チャンネルFFTを用いて、伝達関数の共振特性または対応したインパルス応答を利用して、2または3桁の有効数字の精度で測定できます。(詳細はB&K Technical Review 1994-2:BV0045-11を参照ください)。

 一方、減衰が大きくて共振を測定できない場合には、以下のような方法で測定されます。入力と貯蔵エネルギーの定常状態測定で行います。対象構造に対する入力パワーPを駆動点の力と速度の積から求めておき、その構造の運動エネルギーEを質量と自乗速度の積の積分から求めて、損失係数η(=P/ωE)が得られます。

 統計的エネルギー解析の対象周波数帯域では、多数の共振周波数が存在するため、特定の共振周波数を注目することができないので、対象の内部損失係数η測定のために、この方法や周波数帯域の残響時間T60測定法が利用されます。これらは特殊な方法ですが減衰測定の参考にしてください。

  
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